東京地方裁判所 昭和25年(行)57号 判決
原告 東曹産業株式会社
被告 経済調査庁東京管区経済局長
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、「被告が原告に対し、昭和二十五年十二月四日為したニツケル地金千八百五十瓩の譲渡命令中昭和二十六年二月二十日附東京経済安定局の裁決により取消された部分を除いた残余のニツケル地金六百三瓩の譲渡命令を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、被告は原告の保有しているニツケル地金千八百五十瓩について右ニツケル地金は原告が指定生産資材割当規則第九条に違反して所有する不正保有物資であるとして過剰物資在庫活用規則第四条の規定にもとずき昭和二十五年十二月四日附で別紙内容譲渡命令を為し、右命令は同月七日原告に到達したので右命令を不服として右譲渡命令の取消を求めるべく、同月十八日東京経済安定局に異議の申立をしたところ、昭和二十六年二月二十日同庁より右異議申立に対し、前記ニツケル地金中、大阪硅酸曹達株式会社より譲受けたと認められた六百三瓩(以下本件ニツケル地金と略称する。)を除いた、その余の部分の譲渡命令については異議が理由あるものとして取消されたが本件ニツケル地金については異議はその理由がないとの裁決が与えられた。けれども元来本件ニツケル地金は臨時物資需給調整法施行前から訴外大阪硅酸曹達株式会社が所有し、同会社東京工場が千代田区六番町の事務所内に保管していたものであるが、同会社は、昭和二十三年六月二十四日に設立された訴外東京硅酸曹達株式会社との間に同月三十日前示東京工場の建物機械一切その他同工場保管の資材を右新設会社に譲渡することを約し、その後右約定にもとづき、右東京工場の建物、機械等は一括して東京硅酸曹達株式会社に譲渡されたが本件ニツケル地金については、その譲渡について所管官庁の許可を要するので、大阪硅酸曹達株式会社に所有権を留保し、従つて又東京硅酸曹達株式会社よりの譲受代金の支払も留保されたまま、昭和二十四年四月七日東京硅酸曹達株式会社の倉庫へ搬入されていたものであり、その後昭和二十五年八月八日、右両会社は共に原告会社に吸収合併されたので、原告会社は吸収された両会社の権利義務一切を承継したところ、被告が原告が右合併により大阪硅酸曹達株式会社から承継所有するに至つた本件ニツケル地金を目して、合併前すでに大阪硅酸曹達株式会社から東京硅酸曹達株式会社に対し指定生産資材割当規則第九条に違反して譲渡されていたものであるとし、原告はこれを合併によつて東京硅酸曹達株式会社から承継所有するに至つたものであるから過剰物資在庫活用規則にいわゆる不正保有物資であるとして、譲渡命令をしたものであるが、前述のように合併前に本件ニツケル地金の譲渡はなく、従つて不正保有物資ではないのに、これを不正保有物資としてなされた譲渡命令は違法であるから、その取消を求めるため本訴に及んだものである、と述べた。(立証省略)
被告指定代理人は主文同旨の判決を求め、原告主張事実中訴外大阪硅酸曹達株式会社から訴外東京硅酸曹達株式会社に対し、原告主張の本件ニツケル地金六百三瓩の譲渡がなかつたとの点を除いたその余の事実はすべて認める。
本件ニツケル地金は、昭和二十五年四月七日頃、東京硅酸曹達株式会社が、指定生産資材割当規則第九条各号所定の場合に該当しないのに拘らず、大阪硅酸曹達株式会社より譲受けたものであるから、過剰物資在庫活用規則にいわゆる不正保有物資に該当する。よつて被告は、右東京硅酸曹達株式会社の包括承継人である原告に対し、本件ニツケル地金につき譲渡命令を発したものであり、右命令には何等違法な点はないから、原告の本訴請求は失当であると述べた。(立証省略)
三、理 由
原告主張事実は、右事実中訴外大阪硅酸曹達株式会社から訴外東京硅酸曹達株式会社に対し本件ニツケル地金六百三瓩の譲渡がなかつたとの点を除いてすべて当事者間に争のないところである。そこで右譲渡の有無について考えると成立に争いのない乙第一号証の一その原本の存在並に成立について争いのない乙第一号証の二、四、原告において、その成立を明に争わないので真正に成立したことを自白したものと看做される乙第二号証を綜合すれば、本件ニツケル地金は、昭和二十四年四月七日、訴外大阪硅酸曹達株式会社より、代金後払いの約旨で訴外東京硅酸曹達株式会社に譲渡された事実が認められる。証人池山汎の証言並に原告代表者訊問の結果中右認定に反する部分はいづれも信用ができないし、甲第三号証の一、二は仮に真正に成立したものとしても、同号証だけでは右認定を左右し得る的確な証拠とは言えないし、その他右認定を覆えすに足りる証拠はない。
しかも東京硅酸曹達株式会社が右認定に係る譲渡を受けたについて指定生産資材割当規則第九条各号所定のいづれかの場合であつたことについて主張立証のない本件では東京硅酸曹達株式会社の右譲受によつて取得した本件ニツケル地金は、前示規則の規定に反して譲受けられたものとして、過剰物資在庫活用規則所定の不正保有物資であると断ずるの外なく、従つて、合併によつて東京硅酸曹達株式会社の権利義務を承継し本件ニツケル地金の所有者となつた原告に対し、過剰物資在庫活用規則にもとづき、本件ニツケル地金を不正保有物資として被告がなした譲渡命令は何ら違法な点がない。よつて右譲渡命令の取消を求める原告の請求は失当として棄却を免れないものと言うべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 毛利野富治郎 河野力 山田尚)
(別表省略)